ごあいさつ
公益財団法人大原記念労働科学研究所理事長 濱野 潤
労働科学研究所創設の熱い志
労働科学研究所は、実業家大原孫三郎により、1921年(大正10年)倉敷紡績株式会社の地に創設されました。当時の紡績業は深夜勤務をはじめ厳しい環境での労働によって支えられており、先見性に富む孫三郎は紡績工場の労働条件を科学的に改善する意欲に燃えていました。その思いに共感した暉峻義等初代所長らは、工場に泊まり込んで作業実態を調査分析したのでした。
その後の歩み
爾来九十有余年に及び、労働科学研究所は現場に密着し、現場を起点とする研究成果を積み重ね、働く者の安全・衛生・健康の増進と問題解決による経営との連携、産業の健全な発展に多大な貢献をしてまいりました。この間、経営形態も変遷を重ね、2012年(平成24年)には公益財団法人となりました。
伝統と革新
少子高齢社会における労働力の需給マッチングと産業の活性化、グローバル時代の人材育成と安全衛生の新展開、ICTの進展によって変容する働き方と労働の質など労働科学研究所が取り組むことが期待されている課題は山積しています。
このたび労働科学研究所は、創業の精神に立ち返り、新たな展開を図ることといたしました。大原孫三郎及びそのご子息である大原總一郎と強い絆でむすばれていた清水安三を創設者とする学校法人桜美林学園と連携し、これまでの産業界、労働界との連携による研究活動の成果を大学、大学院教育に還元してまいります。
労働科学研究所の創業時に、研究者たちが教室や実験室から働く現場に入って、労働科学を実践した「現場主義」による研究成果をもう一度教室に戻すことは、産学協働の実践であり、多くのシナジー効果をもたらし、労働科学研究所の価値を大いに高めるものと確信いたします。伝統を生かしながら革新を実現してまいります。
労働科学研究所は、これからも半歩先を見た研究事業に取り組み、研究成果を発信するとともに、新たな飛躍を目指して役職員一同邁進してまいります。旧来にましてご指導、ご鞭撻を賜りますよう、切にお願い申し上げます。
平成27年7月 濱野潤