厚生労働省は平成25年6月18日、「職場における腰痛予防対策指針」を改訂を公表しました。
19年ぶりに「職場における腰痛予防対策指針」を改訂
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/youtsuushishin.html
職場での腰痛は、休業4日以上の職業性疾病のうち6割を占める労働災害となっています。厚生労働省は、平成6年9月に「職場における腰痛予防対策指針」 を示し、主に重量物を取り扱う事業場などに対して、啓発や指導を行ってきましたが、近年は高齢者介護などの社会福祉施設での腰痛発生件数が大幅に増加して いる状況にあります。
このような状況を受け、適用対象を福祉・医療分野等における介護・看護作業全般に広げるとともに、腰に負担の少ない介護介助法などを加えて改訂を行い、指針を発表しました。今後、今年度は社会福祉施設に対する指針の普及・定着を目的として、介護事業者を対象とした腰痛予防対策講習会の開催などの支援事業を実施する予定とされています(以上、厚労省通達から引用)。
今回の改訂では、欧米の介護・看護職場で導入されている「ノーリフトポリシー」(腰部に著しく負担がかかる車椅子やベッド等への移乗介助等では、原則として人力による人の抱上げは行わせない方針、参照:日本ノーリフト協会)が明記されたことは画期的なことです。職場におけるリフト等の福祉機器を積極的な活用と相まって、利用者の安全や看護・介護職の腰痛などの筋骨格系障害の防止などの取り組みが促進されることが期待されます。
当研究所の雑誌「労働の科学」でも、2013年7月号(68巻7号)において特集「介護労働と腰痛予防」を組み、改訂指針の解説(岩切一幸氏)、介護労働の現在と安全衛生マネジメント(甲田茂樹)等の記事を掲載予定です。
以下は、今回の改訂指針の概要です。
職場における腰痛予防対策指針の改訂の概要等
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1 指針の構成
(1)一般的な腰痛予防対策の総論
【1】はじめに(指針の趣旨・目的等)
【2】作業管理(自動化・省力化、作業姿勢等)
【3】作業環境管理(温度、照明、作業床面等)
【4】健康管理(腰痛健診、腰痛予防体操等)
【5】労働衛生教育(腰痛要因の低減措置等)
【6】リスクアセスメント、労働安全衛生マネジメントシステム
(2)作業態様別の対策(腰痛の発生が比較的多い5つの作業)
【1】重量物取扱い作業
【2】立ち作業(製品の組立、サービス業等)
【3】座り作業(一般事務、VDT作業、窓口業務、コンベア作業等)
【4】福祉・医療分野等における介護・看護作業
【5】車両運転等の作業(トラック、バス・タクシー、車両系建設機械等の操作・運転)
2 主な改訂事項・ポイント
○介護作業の適用範囲・内容の充実
・「重症心身障害児施設等における介護作業」から「福祉・医療等における介護・看護作業」全般に適用を拡大
・腰部に著しく負担がかかる移乗介助等では、リフト等の福祉機器を積極的に使用することとし、原則として人力による人の抱上げは行わせないことを記述
○リスクアセスメント、労働安全衛生マネジメントシステムの手法を記述
・リスクアセスメントは、ひとつひとつの作業内容に応じて、災害の発生(ここでは腰痛の発生)につながる要因を見つけ出し、想定される傷病の重篤度(腰痛 に関しては腰部への負荷の程度)、作業頻度などからその作業のリスクの大きさを評価し、リスクの大きなものから対策を検討して実施する手法(労働安全衛生 法第28条の2)
・労働安全衛生マネジメントシステムは、事業場がリスクアセスメントの取組を組織的・継続的に実施する仕組み(労働安全衛生規則第24条の2)
・これらは、いずれも労働災害防止対策として取り組まれているものであるが、腰痛予防対策においてもこれらの手法が効果的であることから改訂指針に明記
○一部の作業について、職場で活用できる事例を掲載(チェックリスト、作業標準の作成例、ストレッチング(体操)方法など)
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